「自分を鍛える」高1、お寺での修行(その9) - 安城市 特進サクセスホームページ 学習塾 岡崎市 小学生 中学生 高校生 個別指導

「自分を鍛える」高1、お寺での修行(その9)

高校1年の7月から12月まで、お寺に生活拠点を移して私の「修行」が始まった。自ら志願してお寺での住み込み生活をお願いし許可していただいたので、わがままは絶対言えないので、早く慣れて、分からないことはどんどん質問し、自分のすべきことを責任持ってやっていかなくてはならないと心に決めてから約1ヶ月が過ぎた。夏休みに入り、部活と補習があるくらいで学校は忙しくはなかった。

 ある日の朝、ご住職から「高原君、今度ゆっくりお話をしましょう」とお声がかかった。「きょうの午後は空いてますけど・・」と返事したら「それはいい。私も空いてます。2時でどうですか?」「大丈夫です。分かりました。」「では2時に、前にあなたに出した宿題を持って私の部屋に来て下さい。」面談の日時が本日午後2時に決定した。

 私のきょうの予定は午前の部活だけだった。自転車での通学時間は約30分。登校時も下校時も頭の中でご住職との面談のシュミレーションをずっとやった。下校時の道程は短く感じ、あっという間にお寺に着いてしまった。遅い昼食を取るともう約束の時間になった。

 

 「失礼します。高原です。参りました」しばらく間があって「どうぞお入りなさい。」

ご住職の居室は和室だった。勧められた座布団を脇に寄せて畳の上に正座した。

「心がずいぶん落ち着きましたね。慣れるのがとても早かったです。お経を読む声も大きくてハリがある。いっそ仏門に入りませんか?僧侶になりませんか?」と笑顔でおっしゃった。

「いえいえ、とんでもないです。おそれおおいです。」「そうですか?そんなことはありませんよ。まぁ、寺の坊主になる覚悟が出来たら教えてくださいね。ところで私からの宿題は出来ましたか?」「はい、持って参りました。」持参したノートを両手で渡した。

 

 およそ10分間、点検するかのごとく、じっくりと、黙ってノートをめくられた。わたしはご住職の顔をずっと見ていた。せみの声だけが聞こえてきたが私の中で沈黙の時間へと変わっていった。汗が急にふきだしてきた。丸裸にされるように感じた。ご住職はノートの中を全てお読みになられた。

 

「いいと思います。だいたいできてます。いいです。」

 

びっくりした。合格したのか?はたまた不合格なのか?

 

「第1段階は合格ですね。」(合格だ、うれしい!でも・・・?) 

(だ、だいいち、第1段階!?)

 

「高原君、次の宿題を出しますね。このノートの中の「将来やりたい事100か条」に優先順位をつけてみてください。一番やりたい事から順に1、2、3と、数字を打ってみてください。それが宿題です。」

 

 書き出すだけでも頭の中から絞り出すような作業だと思ったが、さらにこの箇条書きの一つ一つにやりたい順に数字を打つのは大変だ。難しいことだ。大学に行きたいとか、学校の先生になりたいとか、海外旅行にいきたいとか、はたまたオートバイに乗りたいとか、頭に浮かぶことを、死ぬまでにこれだけは是非やりたいという事は書き出した。それに序列というか順番を付ける作業は、何を基準に決めればいいのか?

 

「高原くん、お盆休みまでにノートの中に優先順位をつけて私にみせてください。お願いですよ。約束ですよ。」とご住職から第2段階の宿題をいただいた。

 

物事を決定するためには情報が必要だ。その情報に基づいて、知識、理解、予算、価値など総体としてとらえ、最終的に自らが決定しなければならない。何を優先させるか?優先させるべきか?プライオリティ(priority)の決定は本人の人生観によって決まる。

 

「決めれますか?お盆までにですよ!」

 

ご住職の問いかけに返事が出来なかった。

(つづく)

 

 

 

 

 

 

 

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